未払い残業代.不払い

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株式上場マニュアル(b)

『担当者別株式上場マニュアル』より

【未払残業代の支払】

- Navi - 先程来何度か出てきました未払残業代ですが、今まで残業代を支払ってこなかった場合、その未払残業代は遡って支払う必要がありますか、また遡るならばどの程度遡るのでしょうか?

- 高橋 - もし、未払残業代があるのでしたら、できれば上場を考えた段階で負の遺産を一掃した方が良いですね、遡るのは最大で2年間です。これは、賃金債権の消滅時効が2年間である(労働基準法115条)からです。

- Navi - これは、とてつもない金額が出る可能性がありますよね。先程例に出した会社ですが、タイムカードで2年間遡ったところ2・3億の数値が出てきてしまったのです。それまでは残業申請などなく、仕事をしている訳でもないのに居残り、帰りにタイムカードを押していることなども多々ありましたから。これは能率よく仕事をしている訳でもないのに、ただ会社に夜遅くまで残っていたり、土日にも出勤している社員をみると社長の機嫌が良い(評価が高くなる)からだったのですが、しかしこういう考え方は後々上場を目指すとなると、とんでもない目に合うかもしれません。(笑)

【残業時間の管理方法】

- Navi - 上場会社や準備会社に限らない話ですが、多くの会社の労務を見てこられた経験から、残業時間の管理を上手くする方法は何かありますか?

- 高橋 - これは難しいですよね。工場勤務の場合は、ラインに立ちそのラインが動いていれば間違いなく労働しているはずですので。問題はホワイトカラーの事務職等の場合です。事務職は、工場ラインのように勤務時間内にそれだけ密度の濃い仕事をしているかというとそうとも限らず、いわゆるダラダラ残業と言われる、本当は密度を濃くやれば残業せずに済む業務をダラダラ行ない残業となってしまうことは多々あります。

- Navi - 確かにありますね。また、社会的な方向としてもブルーカラーよりもホワイトカラーの仕事が多くなっていますし。

- 高橋 - ですので、こういったダラダラ残業をなくすためには、事前申請・許可制にした方がよいと思います。例えば、終業時間が夕方6時だとしたら、5時までに残業が必要であるならば上司に申請し、上司がその内容を確認し許可を受けてから残業をするようにします。

- Navi - 先程の会社でも、その後残業する際には事前申請が必要になったのですが、それまでは夜遅くまで会社に居ると機嫌の良かった社長が、一転勤務時間外にいると機嫌が悪くなりました。(笑)

- 高橋 - 確かに『残業している=仕事をしている』と言う風土を作らないというのも大切です。本当に忙しくて残業するのならよいのですが、取り立てて緊急性も必要性も無く、仕事の工夫も無く、非効率にダラダラ残業した者の方が残業代を稼げて評価も高くなるというのは一般的に考えてもおかしな話です。ですので上司は、本当に忙しくて残業しているのか、効率が悪くて残業しているのかをしっかり見極める目が必要になってきます。

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【残業代を抑える方法】

- Navi - 今の話と重なるところもあるのですが、残業代を抑える方法というのはありますか?

- 高橋 - 私の顧問先で事前申請・許可制にしたことにより、残業が激減した事例もあります。そこの会社では、例えば従業員がタバコ休憩と称して、1時間ごとに5分から10分程度勝手に休憩を取っていたんです。たとえ5分休憩でも、1日8時間労働ならば40分の無駄、1ヶ月ならば約13時間の無駄、1年ならば約160時間の無駄ですよ。時給を仮に1,500円としたら、たった一人で年間24万円無駄に給料を支払っていることになりますから。

- Navi - 先日大阪の橋下府知事が、「朝始業前たった10分程度の朝礼をするのに『時間外労働だ!時間外手当をよこせ!』と言うのなら、業務中のタバコ休憩は廃止だ!」と怒っていましたね。(笑)

- 高橋 - ええ、たかだか5分10分でも積もり積もれば大きいですからね。
 こちらの顧問先でも社長自ら率先して、従業員各自の意識改革と業務効率化も合わせて行いましたので、残業代の激減という結果になったのだと思います。社長のリーダーシップはやはりどのような場面においても重要です。その他にも、各種のみなし労働時間制やフレックスタイム制などの変形労働時間制、シフト勤務制などを組み合わせれば、かなりの残業時間削減は可能だと思います。

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