取締役の報酬.賞与等の解説

株式公開入門Naviクローズアップ取締役と取締役会取締役の概要取締役の報酬等

取締役の報酬等

取締役の報酬

 会社法では、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益のことを、『報酬等』と定義し規制しています。

 ■報酬・賞与

 取締役の報酬等については、定款で定めていない限り、原則として株主総会の決議によって定められ、株主総会の何らの承認もないままに報酬等を決めることはできません。
 この規定の趣旨は、取締役の報酬額について、取締役や取締役会によるいわゆる『お手盛り』の弊害を防ぐためです。

 株主総会では、少なくとも取締役全体の報酬等の総額を定める必要がありますが、個別役員への配分方法は取締役会で自由に決定でき、代表取締役への委任もできます。また、個別の受給額を株主総会で説明する義務も原則的にはないものと考えられています。

 ■ストック・オプション

 ストック・オプションについても、取締役の報酬等の一つとして、株主総会の決議によって定める必要があります。

 ストック・オプションとは、あらかじめ決めた価格で自社株を購入できる権利のことです。株価が上昇したところで権利行使し、株を売却すれば値上がり益を得られ、取締役および使用人の勤労意欲を高めるものとして評価されています。

更に詳細は[ストック・オプション]

報酬のタイプ

 ■確定金型

 報酬を確定した金額で定める方法です。『○○取締役の報酬は、月額(年額)△△円とする』というように個々人で定めるか、プライバシーを配慮して、取締役全員の報酬総額の最高限度額だけを定め、具体的な配分は取締役会(または社長・代表取締役)に委ねるという方法があります。多くの会社では、後者を選択しています。

 ■不確定金額型

 『業績連動型報酬』のような場合に、具体的な算定方法を定める方法です。たとえば、『取締役の年間報酬総額は、前営業年度の経常利益の○○%する』というように定めます。

 ■非金銭型

 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容を定めます。たとえば、月の家賃が50万円相当に値する社宅に20万円の負担で提供されている場合に、その差額の30万円が報酬となります。

退職慰労金

 退任する取締役に支払う退職慰労金は報酬等にあたるかどうかという問題があります。
 報酬等は取締役が職務執行の対価として受ける財産上の利益ですが、退職慰労金もその在職中における職務執行の対価としての報酬の後払い的性格が強いところから、報酬等の一部と解され、通常の場合株主総会で承認を得ます。
 したがって、退職した取締役は必ずしも退職慰労金がもらえるわけではなく、退職慰労金を請求されても、株主総会の決議がなければ、請求に応じる義務は有りません。

 また、近年退職慰労金を廃止する会社も多く、これは『役員はプロとして毎年の業績、使命達成の程度に応じて報酬を受けるべきで、年功の意味合いの強い退職慰労金はふさわしくない』というのが理由です。特にこの様な観点から、社外取締役に対する退職慰労金については、株主総会で反対が多くなっています。

報酬と責任

 取締役に対する責任の重さは、報酬に関係なく、たとえ報酬を全く貰っていなかったとしても、責任を負うことがあります。また、「責任を負わない」と文章を交わしても、取引先などにその免責契約を主張することはできないでしょう。

 ただし、以下の手続きによりその損害賠償責任の全部または一部を免除することができます。

手続き等 注意事項 責任を免除できる下限
株主総会の
特別決議
・責任を問うべき事案、責任の限度額の根拠、減免する理由を開示する
・以下の場合には、扱いがことなる
 違法配当・・・配当限度額を超えた部分は免除不可
 利益相反取引・・・全株主の同意が必要
・監査役全員の同意
・代表取締役⇒
     報酬の6年分

・その他の取締役⇒
     報酬の4年分

・社外取締役⇒
     報酬の2年分
取締役会の
決議
・定款で、取締役会の過半数の決議で免除できる旨の規定を定めておく
・ただし、総株主の3%以上の議決権を持つ株主が意義を唱えた場合は減免不可
・監査役全員の同意
社外取締役の
責任限定契約
・事前に契約を結ぶ
・監査役全員の同意
報酬の2年分と、定款で定めた責任額のうち契約で定められた責任額のいずれか高い額

取締役.報酬.賞与取締役の義務

コンプライアンス取締役.報酬.賞与

 
取締役.報酬.賞与