敵対的買収.防衛策

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狙われやすい企業

ターゲットになりやすい企業

 買収には株式を買い集めることが大前提となりますので、公開会社のように株式が市場で売買できる状態である必要があり、市場に出回っている株式(浮動株)が多く株主構成が不安定であれば、多くの株式を買い集め安くなります。 財務状態としては、現金や換金性資産を多く所有している場合や、PBRが低い場合などもターゲットとなり易くなります。
 更に買収後利益を確保し易い企業として、赤字事業を抱えながらリストラがなかなか進まない企業や、メディアや金融など規制に守られ『経営の効率化』と言う意識が働き難い業種もターゲットとなり易くなります。

 ■株主構成が不安定な企業

 会社の筆頭株主が経営者や資産管理会社などの安定株主であれば、買収者のTOBに応じる可能性が少なく、しかも持分比率が高ければ、経営権を手に入れるのに必要な株式を買い集めるのが難しく、まず狙われることはありません。

 逆に筆頭株主が、利益追求を目的とする機関投資家・外国人投資家・個人投資家の場合には、敵対的買収者であれ、高額でTOBを行えばそれに応じる可能性が高く、株式を買い集めやすい株主構成だといえます。また筆頭株主でなくとも、持分比率が高ければ同様のことがいえます。したがって、敵対的買収者は、ターゲットの対象とした企業の『株主構成』を調べ、不安定なら狙い目と判断します。

 かつて日本では『株式の持ち合い』が行われ、企業が互いの株式を持ち合うことで、敵対的買収を防いできましたが、バブル崩壊後の不況と共に『株式の持ち合い』が崩れ、株主構成が不安定な企業が増え、敵対的買収を仕掛けられる危険性が増加しています。
 しかし、その一方で敵対的買収の危険性から、再びグループ内においての株式も持ち合いを進める動きも出ています。

 ■PBRが低い企業

 PBRとは、株価が1株当たりの純資産額の何倍になるかを示した数値になります。算定式:株価÷1株当たりの純資産額になります。PBRが1倍とは、株価と1株当たりの純資産額が同等であることを意味し、買収を行った場合、買収金額に見合った純資産を得ることができることになりますが、通常、株価は含み資産やブランド力などが加わって、1株当たりの純資産額より高くなり、PBRは1倍以上になります。

 しかし、なかには、利益を預金したまま株主にあまり還元していないなどといった理由から、資産が多いのに株価が低く評価されて、PBRが1倍未満という企業もあります。こういった企業を買収して資産を売ってしまえば、買収価格よりも多額の現金が手に入ることとなり、投資目的の敵対的買収者にとっては利益を得やすい企業としてターゲットになり易いことになります。

 ただし、PBRの計算に用いられる『純資産額』は帳簿上の金額であり、時価とかけ離れている場合もあるので注意が必要です。

 ■優れたコンピタンス(能力)を有する企業

 以前はM&Aというと、業績悪化した企業が健全な企業に買い取られるというケースが多くありましたが、敵対的買収ではどちらかといえば、優良な企業が狙われることが多くなります。特に、高度なコアコンピタンス(中核能力)をもつ企業は、高いシナジー効果が期待できるため、狙われる確立が高くなります。

 また我が国では、特定の業界への新規参入に際しては、官製ないし私製の規制が付けられていることが、それが新規参入の障壁となるため、特殊な免許や資格を持っている企業は敵対的買収のターゲットになりやすいといえます。
 例えば、プロ野球球団を仙台に作ろうとライブドアや楽天が鎬を削りましたが、ライブドアはプロ野球連盟から承認を得られず、楽天は承認を得たものの球場整備などでさまざまな苦労がありました。その一方で、既存球団であるダイエーホークスを購入したソフトバンクは、ライブドアや楽天に比べれば、スムーズにプロ野球球団を手に入れられたといえます。

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 ■現金等の流動資産が多い

 現金などの手元流動性が高い資産を多く所有していることを『キャッシュリッチ』といい、現金やそれに準ずる資産が多い状態をいいます。現金はもとより現金化し易い資産は、直ちに現金化するなどして支払にあてることができます。
 こうした資産が多ければ、買収に成功し営業権を取得した後に、企業を解散し財産を分配すれば、買収コストを取り戻すだけでなく余剰資金も手にすることが可能になるのです。また株主総会では、手元資金が多ければ、余剰資金として増配を求め易くなります。

 他に、M&Aの対象になり易い業界(業種・業態)や企業は、一般的に次のような傾向があります。

  • 現金等の流動資産や内部留保が厚く、株価が割安(時価総額が低い)に放置されている会社
  • 業界が成熟しており、シュアの大小が経営効率に影響する業界
  • 参入障害が高い業種・業態
  • 独自の販売ルート・技術・人材を保有し、時価総額が比較的小さい会社
  • 医薬業界等、グローバルな集約が進みつつある業界
  • お家騒動や内部分裂などにより、頻繁に経営者が交代する会社(分断しやすく攻めやすい)

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