数値に基ずく経営判断

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数値経営

外部任せからの脱却

 月次決算・年度決算とは企業の月毎・年毎の企業業績をあらわすものであり、この各決算資料は本来経営判断には欠かせないデータであるのにもかかわらず実際有効に活用している未公開企業は少ない状況です。
 その原因として、『スピード・正確性・決算書読解力』の欠如が挙げられます。

  • スピード・・・月次決算資料が1.2ヶ月後に、年度決算は税務申告期限間際に出てくる
  • 正確性・・・処理ミス・取引計上忘れ等で後から数字が変わってしまう。
  • 決算書読解力・・・社内に決算書を読める、理解できる人材がいない 等

 未公開企業では、決算書作成業務を税理士事務所等に依頼しているケースが多々ありますが、上記に揚げた原因の根本として、この他人任せの決算書作成が考えられます。

 私も会計事務所としてお客さんの月次を何件も作成してきましたが、正直 月1〜2回の訪問で社長や会計担当の方と数時間話しただけでは会社の業務実態を掴みきれず、その中で月次決算状況・来月の対策などを話すにしても、在り来りのことを話すことしかなかなかできません。一方会社内では私が月次を作成することで、月次決算の数字を把握している人はいない状況ですし、いくら会計担当の方に説明してもなかなか理解しきれません。結果、私は実業務を把握しきれず・社内は数値を読みきれない状況で月次決算数字はただの紙切れとなり経営判断材料に活用されていない状況が多々ありました。

 会計の数字だけの読み取りでは経営判断材料にはなかなか成り得ず、業務実態と数字とをあわせる見ることで、はじめて数字の意味するところ(問題点・修正点)が見えてきます。業務実態と数字とをあわせ見ることは外部の人間ではなかなかできません。月次決算を活かすには、社内において経理を行うことはが必要になります。

経営判断

 更に、公開後に情報公開する基本は数値でです。公開企業は、その数値の説明・責任が重要で、いつ何時外部投資家からの問い合わせがあるかわかりません。そんな時に内部で回答できる人間がいなくては問題です。株主総会における質問も同様です。
 自社で経理業務を行うことを会計業界ではよく『自計化』と言いますが、上記の要因からも株式公開にはこの自計化を可能にする社内体制の整備が求められます。

数値に基ずく経営

 上記しましたが、公開企業では数値に対する説明・責任が重要です。未公開企業では『決算書資料の無い経営判断・他人任せの税務申告目的の経理』でも許されましたが、公開企業となると外部利害関係者(株主・証券会社・監査法人等)は決算書数字で話し、決算書数値での結果を求めてきますので、決算書上の利益(経常利益・当期純利益金額等)で結果を出さなければなりません。

 この様に決算書数値が企業の良し悪しを決める世界で、決算書資料の無い経営判断をしていては通用しません。株式公開を目指すには、会計数値により売上高・各利益等を管理し、その集計結果に基づいた経営判断のできるようにしなければなりません。

アウトソーシング

 『外部任せからの脱却』と上記しましたが、コストの削減等を目的に給与計算や単純業務の一部をアウトソーシングすることは、上場審査上において直ちに問題となるわけではありません。上場審査で問題とされるのは、アウトソーシング先から得た資料を自社で分析できる体制が整っていなかったり、自社で責任をもって開示できる体制となっていない場合です。管理業務の一部をアウトソーシングする場合は、今までの様に会計事務所が主導権を握って行なうのではなく、自社主導で行なうような役割分担とする必要があります。

 なぜなら株式公開準備中、申請作成書類・ディスクロージャー・審査質問等は、財務数値に関するものが中心になりますが、これらに対応できるようにするためには、業務の中枢となるものは自社で行なう必要がありますし、事業遂行の意思決定や会社戦略の方向性を判断するには、自社で資料分析ができなければ行なえないからです。これは、株式公開後の株主総会や投資家からの質問においても同じ事が言え、「経理の数値は、会計士でないとわかりません。」では困りますので。
 もし。アウトソーシングを考えている場合は、監査法人や主幹事証券に事前に相談されることをおすすめします。

 また、経理処理をアウトソーシングする場合には、会社の重要情報を外部者が知ることになりますので、インサイダー情報の管理に注意する必要がありますし、管理部門の人員や体制が十分でないとリスク情報への記載が必要となる場合があります。

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