取締役の第三者に対する責任

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第三者責任訴訟

第三者に対する責任

 取締役は、会社と委任契約の関係にありますから、注意不足で会社に損失を発生させた場合に、会社に対して損害賠償の義務を負うのは当然ですが、他の会社や人に対してまで賠償責任を負わさせることがあります。
 本来、債権者が取引したのは、取締役等の役員個人ではなく会社です。したがって、一次的には、会社の責任と財産によってまかなわれるべきものです。それを、何の保証もしていない取締役などの役員個人にまで負わせるこの賠償責任は『第三者責任』とも呼ばれます。

 会社法では、取締役が職務を行なううえで『悪意』(意図的)または『重過失』(ひどいミス)があって、その結果、会社外部の第三者(取引先・消費者等)に損害が発生したときは、取締役はその第三者に対しても賠償責任を負うものと定めています。

第三者.訴訟.取締役

 この責任が追及されるのは、会社が倒産した場合など、会社からの回収が困難な場合に起きるのが典型的なものですが、必ずしも会社が倒産した場合に限られません。

中小企業には『株主代表訴訟』より『第三者責任』

 第三者に対する責任は、取締役等の単なる過失ではなく、原則として『悪意または重過失』等がある場合にその責任が問われますが、『経過失』なら責任を免れるという文言の印象ほど、責任は軽くありません。

 上場企業の取締役や執行役が株主代表訴訟を心配することが多いのに対して、中小企業の取締役は、むしろこの『第三者責任訴訟』が心配のタネとなります。さらに、例外的に虚偽の情報開示をした場合については、軽過失でも責任を負わされ、その無過失の立証責任が役員側に転換されている第三者責任もあります。

■虚偽記載等の責任

 取締役は、株式・社債などの引受け募集の通知書や計算書類などに虚偽記の記載をした場合、または虚偽の登記もしくは公告した場合など、これによって損害を被った第三者に対して損害賠償を負います。
 この責任は過失責任ですが、第三者の保護を図るため、取締役の側で過失がなかったことを立証しない限り責任が認められる旨規定されています。なお、複数の取締役等で損害賠償責任を負う場合、このときの責任は連帯債務となります。

責任の発生原因

 具体的な責任発生原因として、過去の判例で議論されたものとしては、以下のようなものがあります。

  • 支払見込みのない手形の発行
  • 放漫経営(経営が適切さを欠き、会社業績や資産内容を悪化させ、結果的に第三者の会社に対する債権を回収不可能とさせた)
  • 返済見込みのない手形借入や融通手形の振り出し依頼
  • 会社財産の横領
  • 監視・監督義務違反

第三者.訴訟.取締役株主代表訴訟提起

 
第三者.訴訟.取締役